研究紹介 

物理化学研究室では、様々な化学反応の平衡や速度に及ぼす温度、圧力などの効果を調べ、 平衡論および速度論的立場からの反応機構の解明をおこない、 分子の構造・反応性に関する研究を進めています。

医薬および食品等の材料化学分野の研究
様々な包接機能性分子の機能の解明

★キーワード:超分子化学、包接、圧力効果、材料科学

包接機能性分子は、食品、医薬品、化粧品などの多くの分野において、不安定化合物の安定化、不溶性物質の可溶化など、様々な用途に使用されています。
例えば、シクロデキストリン(環状オリゴ糖)は「生わさび」(ハウス)等に添加され、不安定物質の安定化、揮発性物質の徐放化として利用されています。
典型的な包接化合物の構造
我々は、様々な包接機能性分子(上図:典型的な包接化合物の構造)の機能の解明を包接化合物の形成に伴うゲスト分子の吸収または発光スペクトルの変化を追跡し、包接化合物の安定性および構造について詳細に検討し、 また、それらの包接平衡に及ぼす圧力の効果を調べ、体積の観点から機能の解明をおこなっています。
得られた包接機能性分子の機能の解明に関する情報は、今後の新規包接化合物開発のための有用な情報となります。特に、Cucurbiturilは新規包接化合物であり、その包接挙動には興味が持たれています。
図2 CalixareneとMBとの包接
 上図2CalixareneとMBとの包接 a)Calix-S4 b)Calix-S6 c)Calix-S8 には、これまでおこなった研究の中から、 包接化合物のひとつであるカリックスアレーン(4~8員環)と有機色素分子(メチレンブルー(MB)) との包接化合物の構造を示しており、包接化合物の環の大きさに伴い包接様式が異なることがわかります。

化粧品および食品化学分野の研究
スピントラップおよびスピンプローブ法によるEPR的研究

★キーワード:スピントラップ、スピンプローブ、活性ラジカル、抗酸化物質、高圧EPR、ORAC、二重膜

【抗酸化物質がもつ活性ラジカル消去能の評価法(定量化)の構築】

一般に、抗酸化物質は、活性酸素を消去する物質として認識されており、高い関心がもたれています。体内で過剰の活性酸素は、体内消去システムや食品中の抗酸化物質によって消去され、健康が維持されています。 しかしながら、ストレス、紫外線、など様々な要因によって人体はダメージを受けており、 過剰の活性酸素が糖尿病等の疾患発生の原因となっています。
これらを予防するためには野菜や果物中のビタミンなどの抗酸化物質を含む食品を摂取することが重要となりますが、 その食品にどの程度の抗酸化能力があるのか分からない場合が殆どです。

抗酸化能力が食品にどれだけ含まれているのかを測定する方法として、近年、米国から提案された ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)があり、抗酸化能力を分析する基準として、 世界的に用いられるようになっています。
さらに、米国では、ORAC値を表記した食品が販売され、 消費者に抗酸化力の程度を具体的な数値で表し、健康志向が高まっています。
今後、日本においても、普及してくるものと思われます。我々は最近、速度論的立場から、 ラジカルの反応性を直接追跡する簡便、迅速なORAC決定法として、 抗酸化物質とスピントラップ剤との競争スピントラップ法を用いたORAC-EPR法を提案しました。

現在、機能性食物や抗酸化物質が持つラジカル消去能を決定する統一的な方法をEPRスピントラップ法により開発すると同時に 抗酸化物質と活性ラジカルとの反応機構を解明すべく研究を進めています。