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最近の研究紹介 (反応有機化学研究室)

記録日 : 2020年03月23日

巨大な芳香族化合物を作る:光反応による[n]フェナセンの合成 

岡山大学理学部化学科反応有機化学研グループ(准教授 岡本秀毅)

 

ベンゼンに代表される芳香族化合物には,ベンゼン環や関連の芳香族のユニットがどのようにつながって行くかによって,数え切れないほどたくさんの構造が生まれます.それに伴って,多彩な物性が生まれます.ベンゼンが二次元に敷き詰められるとグラフェンの構造となります.グラフェンは様々な特性から注目されている物質です.グラフェンの構造の中で,ベンゼンが直線的に並ぶ構造をアセン,ジグザグに並ぶ構造をフェナセンと呼びます.これらの構造は,グラフェンの構造の一部をリボン状に取り出してきたように見えるので,グラフェンリボンとも呼ばれます.

 

 

アセン類は,有機物トランジスタとして利用できることが発見されて以来,非常に多くの研究が行われてきました.しかしながら,アセン類は,酸素や光に対して全く不安定でベンゼン環7個以上を持つアセン類は我々が直接手に取って扱うことはできません.これまで観測された最長のアセンはベンゼン12個がつながるドデカセンで,超高真空下でのみ生成され,走査型トンネル顕微鏡(STM)によって観測されています.[1]

 

 

一方,フェナセンはベンゼンがジグザグにつながった構造を持っています.フェナセン類は機能性物質としては,ほとんど見向かれなかった化合物群ですが,我々の研究グループはフェナセンが電界効果型トランジスタ(FET)の活性層として優れた性能を持っていることを見いだしました.フェナセン分子中のベンゼンの数を増やして行くとFETの性能が向上していくことから,現在,巨大なフェナセン分子を合成することに挑戦しています.[2] 

巨大なフェナセンの合成は過去にも報告されていますが,すべて置換基をたくさん持つ誘導体の合成ばかりで,置換基を持たない母体化合物の合成はこれまでベンゼン環7個の[7]フェナセンまでしかありませんでした.我々の研究グループでは光化学反応をキーステップとして置換基を持たない[8][11]フェナセンを合成することに成功しました.これらの巨大なフェナセンは溶媒に溶けないことから構造決定が困難ですが,Prof. G. Hoffmann(台湾国立精華大学)との共同研究で,STMによってフェナセン分子を直接観測し,構造を確認することができました.[2,3]STMイメージはこちら 

[11]フェナセンは置換基を持たないフェナセン類としては現在最長の分子で,アセン類と異なり,非常に安定な化合物であることも判明しました.今後は,さらに長い構造を持つフェナセン類を合成し,分子構造,電子構造や半導体特性などを解明していく計画です.このような研究は,巨大な芳香族分子の合成手法の確立と未知の物性解明に役立っていくと期待されます.

 

 

光反応によるフェナセンの合成.下段は光反応の様子.光反応の後にはフェナセンが沈殿するので,ろ過して集めるだけで簡単に生成物を得ることができます. 

 

[1] F. Moresco et al., ACSNano 2020, 14, 1011−1017 (DOI:10.1021/acsnano.9b08456)

[2] H. Okamoto et. al., Sci. Rep. 2019, 9, 4009. (doi.org/10.1038/s41598-019-39899-4)

[3] G. Hoffmann et al., J. Phys. Chem. C 2017, 121, 11390−11398 (DOI: 10.1021/acs.jpcc.7b01806)


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