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最近の研究紹介 (構造化学研究室)

記録日 : 2020年01月11日 [NEW]

「過充電されたリチウムイオン電池の解析」

リチウムイオン電池の市場規模は現在も拡大していますが,普及に伴い,電池の発火事故の件数も増加していることが報告されています。発火事故の多くは電池の充電中に発生しており,その主な原因として製品製造時の不純物混入や,非正規の充電器を用いた過充電が挙げられています。リチウムイオン電池が過充電されると,電池内部の負極表面に針状の金属リチウム(デンドライト)が析出し,これが負極と正極を隔てているセパレータを突き破るため,内部短絡(ショート)が発生します。電池の熱暴走が引き起こされ,最後には破裂,発火します。よって電池の安全性確保のために過充電は最も注意を払わなければなりません。また長期使用や物理的衝撃により電極内部の形状が変化すると,変形部分に局所的に過充電状態が生じるため,デンドライトが析出しやすくなることも知られています。

私たちのグループでは,リチウムイオン電池の過充電によって生じた負極上のリチウム金属デンドライトが,時間経過によってどのように変化するかを知るため,電池を充放電しながらそのまま観測する「その場観測(in situ)」技術を用いて,核磁気共鳴(NMR)を利用した解析を行っています。コバルト酸リチウム正極と,(a)黒鉛負極もしくは(b)ハードカーボン(無定形炭素の一種)負極から構成された電池を作製し,過充電をした後に放置しながら継続的にNMR測定を行うと,260 ppm付近のリチウム金属の信号が数時間の間に大きく減少し,代わりに炭素負極内に吸蔵されたリチウム((a):38 ppm, (b): 80 ppm)のシグナルが増えることが観測されました。これは過充電により負極炭素上に析出した金属リチウムが数時間の間に徐々に再酸化し負極内に取り込まれていく緩和現象が起きていることを示しています。また,(a)と(b)では後者のほうが金属リチウムの減少幅が大きく,8時間後には80%以上の信号が消えています。ハードカーボンは黒鉛に比較して密度が低く内部に多くの空間(closed pore)が有るため,このような隙間のある構造が,析出リチウムの再吸蔵に有効であることがわかりました。

Fig_Gotog2020

 

発表論文:

1) In situ7Li nuclear magnetic resonance study of the relaxation effect in practical lithium ion batteries, K. Gotoh, M. Izuka, J. Arai, Y. Okada, T. Sugiyama, K. Takeda and H. Ishida, Carbon, 79, 380-387 (2014).

ほか

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