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最近の研究紹介(無機化学研究室)活性炭は金属イオンの除去が苦手?

記録日 : 2019年09月30日

 

空気中の不快なにおい成分や水中の有害物質を取り除く目的で、現在では様々な吸着・分離材料が開発されています。その中でも活性炭は浄水器やエアコンのフィルターをはじめ、我々の身近でも多用されている材料の1つです。活性炭には取り除きたい分子やイオンのサイズと同程度の細孔が無数にあり、これらの細孔内に目的とする物質を閉じ込めることができます。実際、インジゴカルミン(食品添加物の青色2号として使われていて、ジーンズの青色染料であるインジゴからつくられる物質)が溶解した水溶液中に活性炭を加えると、インジゴカルミンのみが活性炭に吸着して透明な水を得ることができます(図1)。

1  インジゴカルミン水溶液(左)およびインジゴカルミン水溶液に活性炭を加えたもの(右). 

 

さて、このような無数の細孔が存在する炭素材料を塩水(塩化ナトリウム(NaCl)水溶液)のような陽イオンと陰イオンが溶解した水溶液中に入れるとどのようなことが起こるのでしょうか?インジゴカルミンのようにNaClが吸着して水中の塩分濃度が減少するように想像できますが、我々の実験によると少々複雑なことが起こることがわかってきました。 

 

我々の研究では、活性炭よりも細孔のサイズがはっきりとわかる単層カーボンナノチューブ(以下ナノチューブと呼びます)を用いました。チューブの直径が12 nm程度の非常に狭い空間を有しています。一方、実験の都合からNaClではなく臭化ルビジウム(RbBr)を用いました。NaClRbBrもアルカリ金属のハロゲン化物という点で似通っており、水中に溶解した際のイオンのサイズが異なっています。 

 

さて、ナノチューブの末端を閉じた状態で水溶液中に分散させてもイオンを吸着することはありません。しかし、末端が開いているナノチューブを分散させると水中のイオンを吸着させることができます。その際、水中のRb+よりもBr-10100倍多く吸着していることが明らかとなりました(図2)。通常、陽イオンと陰イオンは同じ数だけ吸着しないと電荷バランスを維持できなくなるため、このような現象が起こることは非常に不思議です。更に、ナノチューブの表面には炭素原子間の結合を形成する際に使われる電子( p電子と呼ばれる)が豊富に存在するため、Br-はナノチューブの表面と反発し、Rb+は引き合うことになりますが、実験結果は全く逆の傾向を示しています。

2  陰イオン種の異常な吸着現象を示す概念図.

 

この異常な吸着挙動の原因を追究していくと、実は水中のH+(プロトン)がナノチューブに吸着していることがわかってきました。水はその一部が必ずH+OH-に電離していますが、そのわずかなH+Rb+に代わって吸着しているのです。実際、RbBr水溶液中にナノチューブを分散させる前後のpHを測定すると、6付近から10付近にまで増加しており、水中のH+濃度が減少(ナノチューブに吸着)して塩基性になったことを示しています。この現象を上手に利用すれば、活性炭などで水溶液のpHをコントロールできることになります。活性炭は水溶液をろ過することで後から容易に回収できますので、これまでにないpH調整剤として利用できる可能性があります。 

 

このような水由来のプロトンが水溶液からのイオンの吸着に大きく関係していることはこれまで全く論じられてきませんでした。我々は、プロトンが水中の陽イオンに代わってナノチューブに吸着する理由をはじめとして、本現象に関係する様々な謎を解明すべく研究を続けています。

 

 

発表論文 

“Surplus adsorption of bromide ion into p-conjugated carbon nanospaces assisted by proton coadsorption” M. Nishi, T. Ohkubo, M. Yamasaki, H. Takagi, and Y. Kuroda, J. Colloid Interface Sci., 508, 415-418 (2017).

“ Experimental information on the adsorbed phase of water formed in the inner pore of single-walled carbon nanotube itself” M. Nishi, T. Ohkubo, K. Urita, I. Moriguchi, and Y. Kuroda, Langmuir, 32, 1058-1064 (2016). 

 

参考:高校生向け記事・動画(夢ナビ

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