日本語 | ENGLISH

pdf-file化学科
パンフレット

岡山大学理学部化学科
〒 700-8530
岡山市北区津島中3-1-1
FAX: 086-251-7853

注目の研究

ホーム » 注目の研究 » 最近の研究紹介 (機能有機化学研究室)

最近の研究紹介 (機能有機化学研究室)

記録日 : 2019年11月02日 | 更新日 : 2019年11月05日 [NEW]

「次世代の再生可能エネルギー:曲げられる太陽電池に向けた新材料の開発」

現在、化石燃料に代わるクリーンな再生可能エネルギーとして、家屋の屋根などに設置されているソーラーパネルのように、シリコン太陽電池 (無機太陽電池) が様々な場所に設置・導入されています。しかしながら、シリコン太陽電池は作製コストが高い問題点のほか、重くて硬いといった特長から、設置場所が限定されるといった問題点があります。また、今後太陽光発電は、FIT (固定価格買取制度) の終了に伴い、さらなる電気買取価格の低下を招くほか、家庭用などの導入補助金が終了しつつあるため、より安い太陽光発電の導入が望まれています。

このような中、有機薄膜太陽電池は太陽光を吸収し、発電する部分がすべて柔らかい有機物で構成されており、次世代の再生可能エネルギーとして研究が進められています。発電層の作製には、光を吸収するインクを薄いプラスチックフィルム上に“印刷”することで作製できるため、非常に安価に大量生産が可能となります。また、非常に柔らかい有機物で構成されているため、曲げても伸ばしても壊れない ”軽くて柔らかい” 太陽電池が実現できます。そのため、ビルの壁や車の側面など曲面にも設置でき、設置場所を選ばないといった利点があります。また、その意匠性の高さから、窓の調光剤やインテリアにも利用可能です。実際に、鞄やリュックサックの生地の一部を有機薄膜太陽電池に置き換えた試作品が開発されており、スマートフォンの充電が可能であることが実証されています。しかしながら、有機薄膜太陽電池は、シリコン太陽電池よりもエネルギー変換効率と寿命が劣っているため、大面積かつ大量供給が可能となる実用化に至っていないのが現状です。

有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を向上させるには、発電層を構成する有機材料のうち、これまでに開発された材料よりも高い性能を示す新材料を開発する必要があります。有機薄膜太陽電池の光発電層は、正の電荷 (正孔) を輸送する p 型半導体と負の電荷 (電子) を輸送する n 型半導体の 2 種類から構成されており、この 2 種類の材料同士が接する界面で、吸収した太陽光が電子と正孔に変換され、電流として取り出すことのですが、エネルギー変換効率を高めるためには、この p 型半導体と n 型半導体が太陽光をできるだけ多く吸収し、できるだけ多くの電流を取り出すことが重要となります。私たちの研究グループでは、有機薄膜太陽電池の発電層に用いる材料のうち、高い性能を示す p 型半導体と n 型半導体の開発をおこなっています。特に、クロスカップリングという反応を用いたこれまでにない新しい材料を開発することに成功しています。開発した p 型半導体は、下図のように、金属のような光沢を持った非常に濃い色の電気を流すプラスチック (高分子) であり、可視光領域の大部分の光を吸収することが可能です。これを溶液に溶かし、塗布することで数百ナノメートル (10−7 m) ほどの非常に薄い膜を作り、太陽電池素子として用います。現段階で 9% の高い変換効率を達成しており、今後さらに研究を進展させることによってエネルギー変換効率を改善していきます。

図.有機薄膜太陽電池の模式図およびp 型、n 型半導体の化学構造

発表論文

“Phenanthrodithiophene (PDT)−Difluorobenzothiadiazole (DFBT) Copolymers: Effect on Molecular Orientation and Solar Cell Performance of Alkyl Substitution onto a PDT Core”, H. Mori, R. Takahashi, K. Hyodo, S. Nishinaga, Y. Sawanaka, and Y. Nishihara, Macromolecules 2018, 51, 1357−1369.

“Alkoxy-Substituted Anthra[1,2‑c:5,6‑c’]bis([1,2,5]thiadiazole) (ATz): A New Electron-Acceptor Unit in the Semiconducting Polymers for Organic Electronics”, H. Mori, S. Nishinaga, R. Takahashi, and Y. Nishihara, Macromolecules 2018, 51, 5473−5484.

“Vinylene-bridged Difluorobenzo[c][1,2,5]thiadiazole (FBTzE): A New Electron-Deficient Building Block for High-Performance Semiconducting Polymers in Organic Electronics”, Y. Asanuma, H. Mori, R. Takahashi, and Y. Nishihara, J. Mater. Chem. C 2019, 7, 905−916.

[BACK] 一覧へ戻る

[TOP]トップへ戻る