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最近の研究紹介 (反応有機化学研究室) 「カメレオンのように発光色を変える蛍光色素の開発」

記録日 : 2019年01月19日 | 更新日 : 2019年01月28日

反応有機化学研究室

蛍光とは

蛍光は,色素が光のエネルギーを吸収して非常に大きなエネルギーをもつ励起状態となり,励起状態の色素が蓄えたエネルギーを光として放出する現象です.なんだか難しそうに思えますが,蛍光色素は身の回りにもたくさん使われています.例えば,蛍光ペンには黄色やオレンジ,ピンクに光る蛍光色素が使われています.蛍光ペンを,ブラックライトの紫外線の下で見ると蛍光色素が鮮やかに光るのが観測できます.入浴剤には水に溶かすと黄緑色に光っているように見えるものがありますが,これには黄色202号(フルオレセインナトリウム)という蛍光剤が含まれていています.蛍光色素には非常に多くの種類があり,蛍光の色,強度,発光の挙動など,色素の性質は様々で,その特徴を利用して様々に応用されています.もちろん,日常生活に使われるだけでなく,蛍光色素は化学,物理学,生物学の広い分野で利用,研究されています.

蛍光ペンをブラックライトで照らした写真(右) 

 

発光色を変える蛍光色素

 

アミノフタルイミド誘導体は発光色を変える代表的な蛍光色素です.アミノ基(-NH2)は電子を供給しイミドは電子を引きつけるので,分子の中に両方の構造があると双極子モーメントが生じて極性を持つ分子となります.光のエネルギーを吸収して励起状態になると,このような分子の双極子モーメントは大きく変化して,分子を取り巻く溶媒との相互作用環境も変わります.図の中で,楕円は溶媒分子を,楕円の色の違いは相互作用の仕方が異なることを模式的に示しています.これにより励起状態のエネルギーが変化して放出される蛍光の色(エネルギー)が変化するのです.このような蛍光色変化のメカニズムをソルバトフルオロクロミズムと呼びます.

アミノフタルイミドの蛍光特性(ソルバトフルオロクロミズム) 

新しい蛍光色素の開発

反応有機化学研究室では,新しい蛍光色素を開発してその発光特性を光化学的および光物理的に解析しています.特に,様々な条件の下で発光色を変える色素に興味を持ち,アミノ基を持つ芳香族イミドの構造を中心に研究を進めています.ここでは最近の研究から(1)アミノ置換2,3-ナフタルミドと,(2)3-アミド置換フタルイミドの蛍光について紹介します.

(1)アミノ置換2,3-ナフタルミド(2,3-ANI)はアミノ基の位置によって三種類の異なる構造(異性体)が可能です.三種類の異性体を合成して蛍光特性を調べたところ,1-23ANIの蛍光色は溶媒に影響を受けないのに対して,5-23ANI,6-23ANIは溶媒を変えると蛍光色を変化させるソルバトフルオロクロミズムを発見しました.まるで溶媒の性質に応答してカメレオンのように蛍光色を変えたかのようです.特に5-23ANIで青から赤まで可視光の全色にわたって蛍光発光を示すことが初めて明らかになりました.アミノ基の位置が違うだけで三種類のアミノ置換2,3-ナフタルミドの蛍光特性が変わってしまうのは,アミノ基の位置に依存して基底状態と励起状態の双極子モーメントの差に違いが生じるためであることがわかりました.このような発見は,未来の蛍光色素の設計開発に役立つとともに,溶媒などの環境を調べる色素として利用できる可能性があります.また,化学センサーとしての展開を今後行っていく計画です.

種々の溶媒の中での23ANIの蛍光

  1. M. Fujii, M. Namba, M. Yamaji, and H. Okamoto, Photochem. Photobiol. Sci., 2016,15, 842-850. DOI: 10.1039/C6PP00048G (Front cover article)
  2. L. Wang, M. Fujii, M. Yamaji, and H. Okamoto, Photochem. Photobiol. Sci., 2018, 17, 1319-1328. DOI: 10.1039/C8PP00302E (藤井未侑仁科賞)

(2)3-アミド置換フタルイミド誘導体の結晶は,置換基Rの構造によらず蛍光灯の下で見ると無色です.通常,無色の蛍光色素は紫~青の蛍光を示すのですが,これらの化合物は置換基Rのわずかな構造の違いによって結晶状態で青,緑,黄,赤橙色の四色の蛍光を示すことを見つけました.なぜ置換基Rの構造のほんの少しの違いだけでカメレオンのように蛍光の色を変えられるのでしょうか.詳しい蛍光の測定から,置換基RがCOCH3以外の化合物では光のエネルギーを吸収した後に励起状態で水素が窒素原子から酸素原子上へ移動し,互変異性体から蛍光を発すること(励起状態プロトン移動過程,ESIPT)がわかりました.さらに,置換基Rの電子を引きつける力の違いにより互変異性体のエネルギーがコントロールできることが,実験と理論計算両方から明らかになりました.その結果,置換基Rの違いが蛍光色の変化となって現れたのです.固体状態で自由に蛍光の色を変えられる色素は,有機ELなどの発光デバイスへ展開できるポテンシャルを持っているので,さらに多様な蛍光色を実現できる蛍光色素の設計,合成を行っているところです.

3-アミド置換フタルイミドの結晶と蛍光の色

  1. H. Okamoto, K. Itani, M. Yamaji, H. Konishi, H. Ota, Tetrahedron Lett., 2018, 59, 388-391. https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2017.12.049

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