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最近の研究紹介(分析化学研究室)プラズモンケミストリー

記録日 : 2019年06月27日

金、銀、プラチナといった貴金属は、指輪やネックレスなどのジュエリーとして使われ、とても高価なイメージがあります。このような貴金属は、装身具としてだけではなく、科学的にも、とても価値の高いものです。図中右上に赤色の液体の写真がありますが、実はこれも金です。金は、そのサイズを小さくすると、図のような赤色を帯びます。これは、直径が2030 nm(ナノメートル)の金の粒子が水に分散したもので、金ナノ粒子と呼ばれます。私たちが目で感じることのできる光の波長は数百nmですから、金ナノ粒子は、光の波よりも小さいことになります。金のサイズがここまで小さくなると、ちょうど電波を受信するアンテナのように、光(図では緑色の光)を効率よく捕まえることができるようになります。そのため、金ナノ粒子はその補色である赤色に見えるわけです。

金ナノ粒子に捕まえられた光は表面プラズモンと呼ばれ、金ナノ粒子表面に局在・蓄積されます。図に、ガラス平面に並んだ金ナノ粒子が、緑の光を捕まえているイメージを描いてみました。金ナノ粒子の表面に光が蓄積されるため、表面プラズモンはとても明るいという特徴を持ちます。その表面に分子が吸着すると、分子は表面プラズモンに照らされ、照らされた光とは波長の異なる散乱光(ラマン散乱光)を生じます。ラマン散乱光の波長が吸着した分子に依存するため、ラマン散乱光を調べると、どのような分子が吸着しているか分かります。ここに、パラアミノチオフェノールという物質(固体)の通常ラマンスペクトルを示します。この物質に特徴的な2本の大きなピークが見られます。ところが、この物質0.1g1Lのエタノールに溶かした試料では、濃度が低すぎて、そのピークが見えません。ここで、とても明るい表面プラズモンを利用すると、分子がわずかしかいなくても、図のようにピークを観測することができます(表面増強ラマンスペクトル)。この技術は表面増強ラマン分光と呼ばれ、通常のラマン分光と比較して、100万倍程度の感度向上を達成できます。

試料中の微量な成分を見つけ出すためには、強力なレーザー光を照射することも有効です。そこで、1000倍強いレーザーを使って、同じエタノール溶液試料の表面増強ラマンスペクトルを計測しました。すると、それまで見られなかったピークが複数現れました(表面増強ラマンスペクトル(強))。一旦これらのピークが観測されると、レーザー出力を元に戻してもピークは観測されます。強い光を照射すると、パラアミノチオフェノール分子が化学反応を起こし、化学変化によって生成した物質の表面増強ラマン散乱が観測されていました。その後の研究により、パラアミノチオフェノールだけではなく、他の分子でも同様に化学反応が起こることがわかってきました。また、銀ナノ粒子を使っても、同様の化学反応が起こることもわかりました。貴金属ナノ粒子に表面プラズモンが形成されると、「ホットエレクトロン」と呼ばれる高いエネルギーを持った電子が金属中に生成されます。ホットエレクトロンが、ナノ粒子表面に吸着した(或いは結合した)分子を活性化するために、このような化学反応が進行します。表面プラズモンは分子を明るく照らすだけでなく、貴金属ナノ粒子表面で光化学反応を誘起できるわけです。現在、金属ナノ粒子を半導体やナノカーボンなど他の材料と組み合わせることで、エネルギー問題解決へ向け、太陽光エネルギーを電気エネルギーや化学エネルギーへ変換する様々な研究が国内外問わず盛んに行われています。

Fig1

 

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