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最近の研究紹介 (物理化学研究室)抗酸化物質が持つ抗酸化能はどのように評価すべきか?

記録日 : 2019年04月03日

抗酸化物質には,体内に発生した過剰な活性酸素等を消去する働きがあります。したがって,その活性種による生体組織への損傷を防ぐため,抗酸化物質の適量の摂取が重要です。しかしながら,化粧品・食品等に含まれる抗酸化物質がどれだけの抗酸化能をもっているかを具体的な数値で表わす統一した指標作りは,様々な分野での緊急課題であり,遅々として進んでいないというべきです。

我々は,従来の抗酸化能評価法にかわり,短寿命活性種の濃度を直接追跡した迅速・正確な抗酸化物質の活性種消去能の定量化法として,近年開発された多重活性種消去能決定法(Multiple free-radical scavenging method (MULTIS))を用いて抗酸化剤・抗酸化食品の評価をおこなっています。MULTIS法は,5又は6種の活性種を個別に発生させ,それら活性種に対する治験物質の消去能をスピントラップ法で定量する新たな評価法です。ここでは,最近,我々がおこなったローズマリー(岡山産ネバディロブロンコ)の葉から抽出した抗酸化成分の抗酸化活性の定量化を例にあげ,MULTIS法による様々な活性種に対する抗酸化能の決定の重要性かつ必要性について紹介します。

MULTIS法は,個々に発生させた様々な活性種の濃度を追跡する新たな評価方法です。活性種としては,生体内での反応に関わる6種の活性種(ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一重項酸素,過酸化ラジカル,アルキルラジカル(メチルラジカル),アルコキシラジカル)をとりあげ,消去能を調べました[1]。食品,化粧品または医薬品の抗酸化能は,それぞれに存在する抗酸化成分による活性種消去速度定数とその存在量により定量化することができます。スピントラップ法により,抗酸化能は活性種の捕捉剤と抗酸化物質による活性種の“消去速度の比”で表され,容易に見積もることができます。ある月に採取したローズマリーのサンプルからの抽出液を基準にしたローズマリーの抗酸化能を,様々な活性種の消去速度を用いて定量化すると次のように表されます(Figure 1) [2]。

Figure 1. Antioxidant abilities of rosemary extract against oxygen active species for 1 year.

季節の違いによるローズマリーの抗酸化能の変化について興味深い結果を得ました。ローズマリーの抗酸化能は,気温の高い季節に採取したものに比べ,気温の低い季節のものの抗酸化能が高いことがわかります。また,消去される活性種の種類も異なり,1月に採取したものは,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一重項酸素の活性酸素の消去能が高く,7月のローズマリーの抗酸化能に比べて,それぞれ3.9倍,1.5倍,2.2倍になっています。3月採取のローズマリーの抗酸化能としては,アルコキシラジカル(RO・)の消去能が非常に高く,7月のものの消去能の7.7倍にも増加することがわかりました。MULTIS測定より,収穫した季節の違いにより消去される活性種が変化するという興味深い結果を表しており,様々な活性種の消去について評価をおこなうこの研究の重要さがわかります。

  • [1] Y. Sueishi et al., J. Clin. Biochem. Nutr., 60, 76 (2017).
  • [2] Y. Sueishi, M. Sue, H. Masamoto, Food Chem., 245, 270 (2018).

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